心理学用語(か行)

    • 絵画統覚テスト Thematic Apperception Test 略称TAT  マレーとその共同研究者が開発した投影法に属する人格検査。解釈が幾通りも可能な場面を描いた絵画を見せ、物語を作らせてその結果を分析するもの。
    • 快感喪失 anhedonia  心地よい感覚が失われた状態。うつ状態などでみられる。
    • 外傷体験 traumatic experience  心的外傷(psychic trauma)ともいう。外的内的要因による衝撃的な肉体的、精神的ショックを受けたことで、長い間心の傷となってしまうことをいう。
    • 快楽原理 pleasure principle  快楽を求め、苦痛を避けること、最大の効用のあるものを求めようとする人間の行動原理。
    • 解離性同一性障害 Dissociative Identity Disorder 略称DID  解離性障害(強い情動体験によって意識、あるいは人格の統合性が失われる状態)の一種で、ひとりの人に明瞭に区別される2つ以上の同一性、または人格状態が存在し、個人の同一性が損なわれる疾患。
    • 学習性無力 Learned Helplessness  不可避のストレスを与えると、その後、情動障害、欲動制止、認知障害、食欲低下、体重減少などうつ病患者によく似た症状を示すこと。また、自分にはどうすることもできない(逃げられない)状況で不快と感じる刺激を与え続けると、自分で対処しなくなり、その意志も見せなくなること。
    • カタルシス catharsis  「浄化」を意味する。苦痛や悩みなどを言葉に出して表現すると、その苦痛や痛みを解消することができることをいう。
    • 感情転移 transference  面接過程において、患者が過去に自分にとって重要だった人物(多くは両親)に対して持った感情を、目前の治療者に対して向けるようになるという現象。転移は、肯定的・親近的・友好的な感情をともなう陽性転移(positive transference)と、 否定的・拒否的・敵対的な感情を伴う陰性転移(negative transference)がある。なお、治療者が患者におこす転移を逆転移という。
    • 寛大効果 leniency effect  望ましい特性はさらに良いものと評価し、望ましくない特性はそれほど悪くないと寛大な評価をすること。
    • 観念奔逸 flight of ideas  躁状態のときに、考えが次々にわき起こってきてまとまらなくなった状態のこと。
    • 既視体験 deja vu  初めてみるものを今までに見たことがあるように体験すること。
    • 逆転移 counter-transference  治療者の側に未解決な心理的問題があった場合、治療場面において、治療者が患者に対して転移を起こしてしまう場合のこと。
    • 逆向抑制 retroactive inhibition  ある記憶がそれ以降の記憶によって妨げられること。
    • ギャングエイジ gang age  排他的な遊び仲間を求める児童期のことをいう。この年齢の友人関係は、他の世代を寄せ付けず、また同世代であっても特に認めた相手にしか友人関係の門戸を開かず、友人関係に迎え入れる際には、儀式などを行い、自己犠牲的な友情を要求する。
    • 鏡映的自己 looking-glass self  クーリー(Cooley,C.H.)の概念で、他者の自分に対する言動や態度を手がかりとして、自分という人間が他者にどう思われているかを推測し、それに基づいて作り上げた自己概念。他者を鏡のようにみなし、そこに映った自分の像から自己の特徴や状態を知ることから、このようにいわれる。
    • 境界性パーソナリティ障害 borderline personarity disorder:BPD  思春期または成人期に生じる人格障害で、不安定な自己・他者のイメージ、感情・思考の制御の障害、衝動的な自己破壊行為などの特徴がある。ボーダーラインとも呼ばれる。
    • 共感的理解 empathic understanding  ロジャーズ(Rogers,C.R.)が提示したカウンセリング、心理療法における基本的態度のひとつで、あたかもその人のように(as if)という状態を失わずに、来談者の私的世界を自分自身も感じる状態をいう。
    • 強迫性障害 obsessive-compulsive disorder:OCD  自分自身でも不合理であると思っている観念(強迫観念)や行為(強迫行為)が繰り返し現れ、どうして止めることができない不安障害。
    • 恐怖症 phobia  特定のある一つのものに対して、他人には不可解な理由から心理学的、生理学的に異常な反応を起こす症状で、精神疾患の一種。対人恐怖、高所恐怖、閉所恐怖、醜形恐怖など。
    • 虚無妄想 nihilistic delusion  この世は生きるに値しないといったような一切の価値を否定する妄想。

    • 空間知覚 space perception  空間を知覚するためには、広がり・奥行き・方向のすべて、あるいはそのうちのいくつかを知覚するが、このような三次元における位置の知覚のこと。
    • クライエント client  依頼人のこと。特に、カウンセリングなど心理療法を受ける人のことをいう。クライアント、来談者ともいう。

    • 系統的脱感作法 systematic desensitization therapy  特に不安・恐怖の治療法としてウォルピによって開発された治療技法で、恐怖症、不安神経症などに適用され、これらを感じなくすることを目指す。これは、人間は恐怖や不安状態の時、それに拮抗する筋弛緩という反応を同時に行うことができないという原理に基づいている。そこで生理的に不安が抑制される状態、すなわち筋弛緩状態を患者にとらせ、不安を引き起こす刺激を弱いものから強いものへ段階的に繰り返し提示することで、恐怖や不安反応を克服することを目指す。
    • 元型 archetype  ユングの分析心理学の概念で、人間の精神世界には個人的無意識のほかに、集合的無意識があると考え、そのなかに時代や文化を超えた共通の普遍的なイメージを持っているとして、それを元型と呼んだ。通常は意識されることはなく、投影された形や夢の中に現れる。自我(エゴ)や影(シャッテン)、アニムスとアニマ、太母と老賢者、自己(ゼルプスト)が代表的な元型。
    • 原始的防衛機制 primitive defence mechanism  原始的防衛機制とは、クラインが注目した、より早期の乳幼児の発達段階で活発に働いている防衛機制である。原始的防衛機制が発動するのは、S.フロイトやA.フロイトのいう「自我の防衛機制」の成立する前の生後3〜4ヶ月を頂点とする、イド・自我・超自我の構造も混沌として未分化な段階であり、まだ抑圧が成立する以前の世界である。従って自我の防衛機制が抑圧を基盤として成立してくるのに対して、原始的防衛機制は「分裂」が基盤となって他の防衛機制が発生してくると考えられている。クラインは原始的防衛機制として分裂のほかに、理想化と否認を挙げた。
    • 見当識 orientation  自分が今どこに居るのか、今何時か、周りに居る人は誰かなどといった基本的な状況把握のこと。見当識の保たれているかどうかが意識障害の指標となる。

    • 行為者ー観察者バイアス actor-observer bias  行為者は自分自身の行為の原因を外的要因に、観察者はその同じ行為の原因を行為者の安定した内的要因に帰属させるという傾向。
    • 口唇期 oral stage  フロイトが提唱する5つの性的発達段階の最初の段階。口は最初に経験する快楽の源で、生存のためにある。赤ん坊は本能的に吸う。口から満足を得ることで、赤ん坊には信頼と楽観的パーソナリティが発達する。おおむね出生時から2歳までとされる。
    • 口唇期固着 oral fixation/ oral craving  口唇期での欲求が十分満たされなかったり、十分以上に満たされて成長すると、この段階の欲求に異常にこだわるようになること。乳離れが早すぎて口への刺激が不足した場合、悲劇的で不信感に満ち、皮肉屋で攻撃的なパーソナリティが形成される可能性がある。逆に乳離れが遅く刺激を多く受けた場合、タバコやアルコール摂取の意欲の増加、爪を噛む行為などの症状が出る可能性がある。
    • 光背効果(ハロー効果) halo effect  ある対象を評価をする時に、顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のこと。認知バイアスの一種。
    • 広汎性発達障害 pervasive development disorders 略称PDD  「自閉症」「アスペルガー症候群」「レット症候群」「小児期崩壊性障害」「その他の自閉症」という5つ障害の総称。対人関係、意志伝達能力、常同的な行動・興味などの広範囲にわたり発達が妨げられる障害で、中枢神経系の機能障害によると考えられている。一般的に、生後1歳程度までに明らかとなり、しばしばある程度の精神遅滞を伴う。
    • 肛門期 anal stage  フロイトが提唱する5つの性的発達段階の2番目の段階。子どもは特に排便をする時に快を感じることから、その行為をコントロールすることで、より大きな快を得ようとする。おおむね2歳から3,4歳までの時期とされる。
    • コーシャス・シフト cautious sift  個人で単独に決定を行った場合よりも、集団討議を経た後の決定のほうが、より慎重な(コーシャスな)決定になること。
    • 心の理論 theory of mind  デビッド・プレマックとウッドラフによって提唱された、ヒトや類人猿などが、他者の心の動きを類推したり、他者が自分とは違う信念を持っているということを理解したりする機能のこと。自閉症などの発達障害は、心の理論の発達の遅れが、社会的コミュニケーション不全の原因のひとつになっているといわれている。
    • コントロールの錯覚 illusion of control  実際には偶然に支配される現象であるにもかかわらず、そういったものに対して自己の能力や技術によって統制が及ぶ可能性が高いと見積もる現象。
    • コンプレックス complex  精神分析的概念で、心的外傷などの苦痛な体験における情動や、その体験にまつわる観念や記憶の集合。心のしこり。エディプスコンプレックス、劣等コンプレックスなど。